トピックス

2023年度政策実践プロジェクト活動報告

政策科学科「政策実践プロジェクト」

北九州市立大学法学部は、少人数教育が特徴です。教員と学生が密接にかかわり合い、相互に学びあうなかで、社会の変化に対応できる人材育成を目指しています。また、政策科学科では、公共政策分野の課題解決に向けた政策分析、政策立案能力を養うため、フィールドを重視した実践的な政策研究活動を行う「政策実践プロジェクト」を展開しています。

多くの教員が独自のプログラムを実施しています。ここでは2023年度に実施した4つのゼミの政策実践プロジェクトの取り組みをご紹介します。

都市(地域)の魅力創出と価値創造-田代ゼミ

田代ゼミでは、都市(地域)の魅力創出に向けた政策、公共政策分野における価値の創造に関する研究を行っています。具体的には、歴史、文化、景観など地域固有の文化的資源を活用した地域の魅力創出、図書館や都市公園などの公共空間?施設のリ?デザインといった創造的な地域づくりです。

2023年度は、鶴見緑地(大阪市鶴見区)のパークマネジメントと、北加賀屋(大阪市住之江区)のアートのまちづくりのフィールド調査を行いました。鶴見緑地では、大規模都市公園の新しい価値創出と管理運営の実態について、大阪市役所と指定管理者から学ぶことができました。北加賀屋では、閉鎖した造船工場の跡地をクリエイティブセンターとして再生するだけでなく、周辺地域にアーティストが移住し、クリエイティブハブ(創造空間)を形成しています。

今回の調査では土地所有者である不動産会社、コミュニティ農園などのソフト事業を手掛けるアートNPO、地元町内会の三者から話を伺いました。

田代ゼミ写真

多文化共生に関する実践研究-吉田ゼミ

吉田ゼミでは、日本で暮らす外国人にかかわる政策や支援活動、地域での取り組みについて研究しています。入管政策や労働政策、多文化共生に関わる政策が現場でどのように運用され、当事者や日本社会にどのような影響を与えているのか、フィールドワークを通じて考えます。

2023年度は、北九州市内の技能実習生支援ネットワークと共同で料理イベントを隔月で開催し、外国人労働者の労働実態と支援現場における課題について学びました。また、北九州市の『多様性が輝く地域へ「心のバリアフリー」事業』の一環として、高須市民センターで多文化交流イベントを実施しました。広島研修では、多文化共生政策のルーツを知るため、南方特別留学生や、在日韓国?朝鮮人犠牲者など、日本で被爆した外国人の歴史に関するフィールドワークを行いました。

このように、吉田ゼミでは、外国人市民を含めた地域づくりに関わりながら、政策や地域課題を検討する能力を身に付けることができます。

吉田ゼミ写真

島から学ぶ移住?定住政策-黒石ゼミ

黒石ゼミでは、行政学?地方自治論の視点から、地域の現在と未来について学びを深めています。

2023年度は、長崎県五島市での調査研究活動を行いました。全国的に人口減少が深刻となるなか、五島市は離島でありながらも、さまざまな移住定住施策に取り組んでいることもあって、若年者を中心に6年で1,000名以上の移住者を迎えています。

そこで、「なぜこのようなことが可能であったのか」、「五島市の政策は今後どうあるべきか」を調査するため、実際に現地を訪れ、五島市役所と移住者3組(外国出身者を含む)にヒアリング調査を行いました。ここでは学生が主体となって研究課題を設定し、調査先を決め、報告書を取りまとめました。

その結果として、移住者視点を踏まえた政策立案、“五島の等身大の暮らし”の発信、住居の確保に関する政策が必要であるという知見を得ることができました。また、五島市での学びの成果をプレゼンテーションした報告会では、学年を超えた活発な議論が交わされました。

黒石ゼミ写真

動物行政?動物政策の実証分析-横山ゼミ

横山ゼミでは、政策の実施によって社会や私たちの暮らしにもたらされる成果や影響には一体どのようなものがあるのか、地方自治体や中央省庁のあり方、行政に関わる様々な組織?個人の実際の活動に着目した実証的な研究を行っています。

2023年度は、学生主体で設定した「災害と動物」をテーマに、ペット?動物園?家畜の被災時の避難?保護について調べ、12月に熊本県獣医師会、熊本市動物愛護センター、熊本市動植物園、阿蘇にある山田牧場に赴き聞き取り調査を実施しました。

2016年の熊本地震の経験をふまえた、具体的な災害時の救援?受援活動における課題、行政ほか各種団体?個人との連携の実際、復興時の問題点などを詳しく教えて頂き、ペット?動物園の動物?家畜、いずれにおいても、災害時のみならず、日頃からの準備?訓練、市民住民?飼い主等への啓発活動、組織内外への正確かつ迅速な情報伝達が極めて重要であること、加えてその実現の難しさについて考察を深めることができました。

横山ゼミ写真